ヒューマノイドロボットの開発を手がける米国企業 Figure AI が、OpenAIとの提携を解消した。同社CEOの ブレット・アドコック 氏は、ロボット知能において 「大きな飛躍」 を遂げ、もはや外部AIに依存する必要がなくなったと発表した。この決定は、両社の提携が発表されてからわずか数カ月後のことだ。
Figure AIは 約1000億円の資金調達 を完了し、次世代ロボット 「Figure 02」 の開発を加速させている。さらに BMWをはじめとする企業と提携 し、今後4年間で 10万台のロボット導入 を計画。独自AIの強化により、同社はロボット業界で新たなリーダーとなる可能性が高い。
CEOのアドコック氏は、30日以内に「誰も見たことのない」ロボット技術を発表 すると予告しており、その動向がAI業界全体に大きな影響を与えることが予想される。
Figure AIの決断の背景 ロボット知能の「大きな飛躍」とは
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Figure AIがOpenAIとの提携を解消した理由は、単なる戦略変更ではなく、ロボット知能における 「大きな飛躍」 によるものだとされている。同社CEOのブレット・アドコック氏は、ロボットAIの自社開発を進めた結果、もはや外部のAIに依存する必要がなくなったと明言した。
同社は、ロボットが環境に適応し、リアルタイムで学習する能力を強化する「エンボディードAI(身体性を持つAI)」を開発している。従来の大規模言語モデル(LLM)は、テキストベースの理解に特化していたが、Figure AIの技術は 言語・視覚・動作を統合 し、より高度なタスクを処理できるようになっている。特に、自社開発のAIはロボットの動作に最適化され、OpenAIのモデルでは実現困難なリアルタイム制御が可能になったと考えられる。
また、アドコック氏は、LLMの進化が進む一方で「コモディティ化」が加速していると指摘する。AI業界では、新興企業のオープンソースLLMが台頭し、高性能なモデルが無料で利用できる状況 になりつつある。この流れを受け、Figure AIは、自社独自のAIアーキテクチャに完全移行することで、競争力を強化しようとしている。
この決断が正しいかどうかは、今後の技術開発の成果によるが、少なくともFigure AIは、外部依存を排除することで、より柔軟で最適化されたロボットAIの開発に集中できる環境を手に入れたと言える。
AI業界の競争激化 Figure AIが選んだ「独自開発」の道
Figure AIの戦略転換は、AI業界全体の競争環境が急激に変化していることとも関連している。特に、近年のAI技術の発展により、独自モデルの開発が可能な企業が増えており、既存のAI企業との提携に頼る必要性が薄れてきた。
この背景には、オープンソースAIの台頭がある。中国の DeepSeek などは、無料で利用できる高性能なAIモデルを提供し、従来の商用AIに対抗する形で市場に参入している。DeepSeek R1は、OpenAIのGPT-4oと比較されるほどの性能を持ち、非検閲・カスタマイズ可能な点が評価されている。こうした動きが、OpenAIをはじめとする大手AI企業の戦略を揺るがしている可能性がある。
また、Figure AIはAI技術だけでなく、ロボットの大量生産に向けた取り組みも加速している。BMWをはじめとする大手企業と契約を締結し、今後4年間で 10万台のロボットを導入する計画 を進めている。これは、同社のロボット技術が、すでに産業利用に適した段階に達していることを示している。
このような状況の中で、Figure AIはOpenAIとの提携を解消し、完全自社開発の道を選んだ。独自モデルの開発が進めば、コスト削減やデータ活用の自由度向上といったメリットが得られるだけでなく、競争環境の変化にも柔軟に対応できる体制が整う。今後、他のロボティクス企業が同様の戦略を採る可能性もある。
今後の展望 Figure AIの「次の一手」に注目
Figure AIのCEOブレット・アドコック氏は、今後30日以内に「誰も見たことのない」技術を発表すると予告している。これが何を意味するのか、具体的な詳細は明かされていないが、同社の技術革新がAI業界全体に影響を与える可能性は高い。
一方、OpenAIもロボティクス分野での動きを活発化させている。最近では、ノルウェーの 1X社 と協力し、家庭向けヒューマノイドロボット 「NEO」 を発表した。NEOは、AIによる学習を活用し、日常的な作業を自律的に行うことを目指している。これに対し、Figure AIのロボットは、より高度な産業向け用途を想定しており、両者のアプローチは大きく異なる。
今後、Figure AIの発表がロボット業界にどのような影響を与えるのか、またOpenAIがどのように対応するのかが焦点となる。AIとロボティクスの融合が進む中で、新たな競争の波が訪れることは間違いない。
Source:Decrypt