Perplexityは2月14日、AIリサーチツール「Deep Research」を発表した。このツールは、ユーザーの質問に対してAIが自律的に詳細な調査と分析を行い、数分で包括的なレポートを生成するものである。特筆すべきは、無料ユーザーでも1日5回まで利用可能であり、Proプラン(月額20ドル)では1日500回のクエリが可能となる点である。

この価格設定は、AnthropicやOpenAIなどが月額数千ドルを請求する中、AIサービスの価格破壊をもたらす可能性がある。PerplexityのCEOであるアラヴィンド・スリニバスは、「知識は誰にでも普遍的にアクセスでき、有用であるべきです。法外なサブスクリプションプランの背後に隠され、大企業の利益のためだけに利用されるべきではありません!」と述べている。

Deep Researchは、SimpleQAベンチマークで93.9%の正確性を記録し、Humanity’s Last Examでは20.5%のスコアを達成しており、GoogleのGemini Thinkingや他の主要モデルを上回る性能を示している。この新ツールの登場により、AI業界の価格設定やサービス提供の在り方が再考される可能性がある。

AIリサーチ市場における価格破壊の影響と競争環境の変化

Perplexityが発表した「Deep Research」は、AIを活用したリサーチの価格を大幅に引き下げる可能性を持つ。このサービスは、無料ユーザーでも1日5回のクエリを利用可能とし、プロプランでは月額20ドルで1日500回のクエリと高速処理を提供する。従来、AnthropicやOpenAIが提供する企業向けAIリサーチサービスは、月額数千ドルの費用がかかることが一般的だったが、この価格破壊的なモデルにより、高額なサブスクリプションサービスの競争環境が根本から変わる可能性がある。

特に、企業向けAIリサーチの市場では、コストに見合うだけの付加価値を提供できるかが今後の焦点となる。大規模企業向けのAIサービスは、セキュリティやカスタマイズ性、サポート面での優位性をアピールしているが、Perplexityのようなサービスが台頭することで、企業がより低コストで同等の成果を得られる選択肢を持つようになる。これにより、従来のAIプロバイダーは、価格だけでなく、より高度な機能や独自の付加価値を強化しなければ競争力を維持できなくなる可能性がある。

また、AI市場全体においても価格の見直しが進むと考えられる。特に、スタートアップや中小企業にとっては、AIリサーチのコストが下がることで市場参入のハードルが大きく下がる。これにより、競争の激化だけでなく、従来は高額なAIサービスを利用できなかった企業が新たに市場に参入し、イノベーションが促進される可能性もある。

Perplexity Deep Researchの技術的優位性と既存AIとの比較

Deep Researchは、従来のリサーチツールと比較して圧倒的なスピードと精度を誇る。このAIは、1回のクエリで最大42の異なる情報ソースを検索し、平均1300ワードのレポートを約3分で生成する能力を持つ。GoogleのGeminiやOpenAIのモデルと比較しても、シンプルな質問に対する回答精度が高く、SimpleQAベンチマークでは93.9%の正確性を記録している。一方、AnthropicやOpenAIの高度なAIサービスは同じテストで93%以下のスコアにとどまっており、PerplexityのAIが優位性を示していることがわかる。

また、Deep Researchは「Humanity’s Last Exam」において20.5%のスコアを達成しており、これも競合モデルと比較して高い数値となっている。この結果は、Deep Researchが特定の質問への応答だけでなく、より高度なリサーチプロセスを経て情報を整理・分析する能力を持つことを示している。この技術的優位性は、企業がAIを導入する際の判断材料となる可能性が高い。

しかしながら、単なるベンチマークのスコアだけで全てを評価することは難しい。実際の運用環境では、データの更新頻度、プライバシー保護、カスタマイズ機能、API連携などが重要な要素となる。GoogleやOpenAIは、こうしたビジネス用途に特化した機能を提供しており、それが高額なサブスクリプション料金を正当化する要因の一つとなっている。今後の展開としては、Deep Researchがこうしたビジネス機能をどこまで補完できるのか、また、既存の大手AI企業がどのように価格競争へ対応するのかが注目される。

企業向けAIの未来とPerplexityがもたらす変革

今回のDeep Researchの登場は、企業向けAI市場における「価格と価値」の再定義を促す可能性がある。これまで高額なサブスクリプションモデルに依存していた企業にとって、より低コストな選択肢が生まれることで、AI投資の方針そのものを見直す必要が出てくるかもしれない。例えば、多くの企業がAI導入の判断基準としていた「価格=品質」の概念が崩れ、費用対効果を厳密に評価する動きが加速することが考えられる。

特に、AIリサーチは市場分析や財務予測、技術文書の作成など、幅広い分野で活用されている。従来であれば、こうした業務の多くはデータサイエンティストや専門リサーチャーに委ねられていたが、Deep Researchのような低価格で高機能なAIツールが登場することで、企業の意思決定プロセスそのものが大きく変わる可能性がある。企業の経営陣は、従来のAIサービスに頼らずとも、より迅速かつ低コストで同等の成果を得られる選択肢を検討することになるだろう。

また、Perplexityは今後、iOS、Android、Mac向けにDeep Researchを展開予定であり、AIツールの利用層がさらに拡大することが予想される。特に、モバイルデバイスでの利用が一般化することで、個人事業主や小規模なスタートアップでも本格的なAIリサーチを手軽に活用できるようになる。これが実現すれば、従来は資本力のある企業のみが享受できた高度なリサーチ機能が、あらゆる業界のあらゆるプレイヤーにとって手の届くものとなる。

一方で、既存の大手AI企業は、こうした市場の変化にどのように対応するのかが問われる。価格の大幅な引き下げに踏み切るのか、それともプレミアムな付加価値を提供することで差別化を図るのか。AI技術の進化とともに、価格競争の激化は避けられない状況にあり、企業にとって今後の動向を見極めることが重要になるだろう。

Source:VentureBeat