生成AIの急速な普及により、企業のIT環境はかつてない変革期を迎えている。クラウド中心のAI活用から、PC端末自体がAI処理を担う「オンデバイスAI」への移行が進む中、中心的な役割を果たすのが**NPU(Neural Processing Unit)**である。CPUやGPUに続く“第三のプロセッサー”として、AI推論を圧倒的な電力効率で実行できるNPUの登場は、法人デバイス戦略を根底から変えつつある。
Microsoftが定義する「Copilot+ PC」を筆頭に、Intel、AMD、Qualcommなど主要チップベンダーは、NPU性能を競い合いながらAI PC市場を創出している。日本市場でも、Windows 10サポート終了と生成AI導入需要の高まりが重なり、AI PCへの移行は避けられない潮流となった。
本稿では、IT管理者が今後数年で直面するNPU時代のデバイス選定・管理・セキュリティ戦略の全貌を解き明かす。
AI PCとNPUの台頭がもたらす構造的変化

AI PCの登場は、単なる性能の向上に留まらず、パソコンというデバイスの概念そのものを再定義しつつある。その中心にあるのが、**NPU(Neural Processing Unit)**という新しい専用プロセッサーである。CPUやGPUが担ってきた役割に続く「第三のプロセッサー」として、AI処理に特化したNPUは、企業IT戦略において無視できない存在となった。
NPUは、ディープラーニングに不可欠な行列演算を高速かつ省電力で実行できる設計思想を持つ。従来、AI処理はCPUでは非効率で、GPUでは消費電力が大きいという問題を抱えていた。NPUはこの課題を克服し、同等の処理を10分の1の電力で実行可能にしたとされる。たとえば、スマートフォンにおける画像認識タスクでは、CPUが約2W、GPUが約1.5Wを消費するのに対し、NPUはわずか0.2Wで同処理を完了するという検証結果が報告されている。
この効率性は、ノートPCやモバイルデバイスにおいて決定的な差となる。AI PCでは、OSや一般タスクはCPU、グラフィック描画はGPU、AI推論処理はNPUが担うという役割分担が実現し、システム全体の最適化が進む。特にAIを多用するアプリケーションでは、処理速度の向上とバッテリー寿命の延伸を同時に達成できる点が企業導入の決め手となる。
以下は、主要プロセッサー別のAI処理特性の比較である。
| プロセッサー | 主な用途 | AI処理効率 | 消費電力 | 特徴 | 
|---|---|---|---|---|
| CPU | 汎用処理・OS制御 | 低 | 高 | 汎用性は高いがAIには不向き | 
| GPU | 並列処理・映像描画 | 高 | 高 | 高性能だが消費電力が大きい | 
| NPU | AI推論・ディープラーニング | 非常に高 | 低 | 専用設計による省電力AI処理 | 
こうしたNPUの進化は、企業に新たな評価軸をもたらす。これまでPC選定の指標はCPUクロックやGPU性能だったが、今後は「AIタスクをどれだけ効率的に処理できるか」が最重要評価基準となる。IT管理者は、ハードウェアのスペック表だけでなく、NPU性能やTOPS(Tera Operations Per Second)指標などを踏まえて選定を行う必要がある。
AI PCは、CPU・GPU・NPUが協調する「ヘテロジニアス・コンピューティング」へと進化しつつある。これは単なる技術革新ではなく、IT部門にとって電力コスト・セキュリティ・生産性の全てに直結する構造的変化である。
AI処理の主戦場はクラウドからエッジへ:オンデバイスAIの戦略的意義
AIの主戦場は、いまクラウドからエッジへと移行している。クラウド上で実行していたAI推論をPC内部のNPUで処理する「オンデバイスAI」の普及が、その潮流を象徴している。これは単なる技術的変化ではなく、企業のセキュリティポリシー、コスト構造、そして生産性を根本から変える戦略的転換点である。
従来、AIモデルの実行には高性能なクラウドサーバーが必要であった。しかしクラウド依存には、通信遅延(レイテンシ)・データ転送コスト・機密情報のリスクという課題があった。NPUを搭載するAI PCは、こうした制約を打破する。AI処理をデバイス内で完結させることで、リアルタイム性とプライバシーの両立が可能になる。
オンデバイスAIの利点は大きく3つに集約される。
- リアルタイム処理:クラウド通信が不要となり、オンライン会議中の自動翻訳やノイズ除去などが遅延ゼロで実行可能。
- セキュリティ強化:個人情報や機密データを外部サーバーに送信せず、ローカルで完結。金融・医療・法務分野で特に有効。
- コスト削減:クラウドAIサービス利用料やデータ転送料を削減できる。オフライン環境でもAI機能が維持される。
たとえば、MicrosoftのCopilot+ PCでは、AIによるリアルタイム翻訳や背景ぼかしなどをすべてNPU上で処理し、ネットワーク状態に依存しない安定したパフォーマンスを実現している。これは単に生産性を高めるだけでなく、クラウド利用コストの最適化にも寄与する。
オンデバイスAIが普及することは、同時にIT管理者の判断基準にも変化をもたらす。どの程度のAI処理をローカルで実行できるか、どの業務プロセスをクラウドからデバイスへ移行すべきか。これらを戦略的に見極めることが、新時代のデバイス戦略の鍵となる。
AI PCは単なるハードウェアの進化ではなく、「分散型AI運用」の起点であり、企業の競争力を左右する新たな基盤となっている。オンデバイスAIをどう設計し、どう活かすか――それが今、IT管理者に問われている。
Intel・AMD・Qualcommが描くAI PC覇権競争の行方

AI PC市場をめぐる競争は、かつてない速度で激化している。中心にいるのは、長年のx86陣営であるIntelとAMD、そして新興勢力としてARMアーキテクチャを武器に参入したQualcommである。それぞれが異なる哲学と技術戦略を掲げ、**「誰が次世代AI PCの標準を握るのか」**という熾烈な覇権争いが始まっている。
Intelは、法人市場での圧倒的なシェアを背景に、安定性と管理性を武器としている。最新の「Core Ultra」シリーズは、AI専用のNPU「Intel AI Boost」を搭載し、同社の企業向け管理基盤「Intel vPro®」との統合を強化。これにより、リモート操作・セキュリティ対策・デバイス診断といった管理機能をハードウェアレベルで提供する。単なるAI性能ではなく、エンタープライズ全体のTCO削減を意識した設計思想が際立っている。
一方のAMDは、高性能市場で培ったCPU・GPU統合技術をAI領域に展開。2024年に登場した「Ryzen AI 300シリーズ」は、最大50TOPSというNPU性能を誇り、Microsoftが定義する「Copilot+ PC」の要件を超える水準に達している。加えて、Zen 5 CPUアーキテクチャとRDNA 3.5 GPUを組み合わせることで、AI推論と高負荷タスクを同時処理できる柔軟性を確保している。AMDは「AI処理の即応性とマルチタスク性能の両立」を前面に打ち出し、クリエイティブ部門やデータ分析分野で強みを発揮している。
新たな台風の目となっているのがQualcommである。ARMベースの「Snapdragon X Elite/Plus」は、スマートフォン分野で磨いた電力効率をPCに持ち込み、わずか数ワットで高いAI処理性能を発揮する。45TOPSのNPUを搭載しながらも、ファンレス構造で1日稼働を実現する“オールデイ・バッテリー”を武器に、モバイルワーカーや経営層に訴求している。最大の課題はアプリ互換性だが、Microsoftによるx86エミュレーションの進化で、企業利用にも現実味を帯び始めた。
| 企業名 | 主力製品 | NPU性能 | 主な強み | ターゲット市場 | 
|---|---|---|---|---|
| Intel | Core Ultra + vPro® | 最大48TOPS | セキュリティ・管理性 | 大企業・官公庁 | 
| AMD | Ryzen AI 300 | 最大50TOPS | 高性能・拡張性 | クリエイター・技術職 | 
| Qualcomm | Snapdragon X Elite | 45TOPS | 電力効率・携帯性 | モバイル・営業職 | 
AI PC市場の本質的な競争軸は、単なる処理性能ではなく、**「どのプラットフォームが企業のAI戦略に最も適合するか」**にある。Intelが「信頼性」、AMDが「パフォーマンス」、Qualcommが「効率性」という異なる価値を提示する中、IT管理者は自社の利用環境・アプリケーション互換性・運用ポリシーに応じて最適解を導き出すことが求められる。
Microsoftが定義した新基準「Copilot+ PC」とは何か
AI PC市場のルールメイカーとなったのがMicrosoftである。同社は2024年、AI処理能力の新基準として「Copilot+ PC」を発表した。これは単なるブランド名ではなく、AIを“クラウドからローカルへ”移すための明確なハードウェア要件を示したものである。**Copilot+ PCとは、AI体験の最低品質を保証する「次世代のWindows標準」**に他ならない。
その要件は次の3点に集約される。
- NPUが40TOPS以上のAI推論性能を持つこと
- 16GB以上のLPDDR5メモリを搭載すること
- 256GB以上の高速SSDを備えること
これにより、AI PCはクラウドに頼らずに複雑なAI処理を実行できる環境を持つことが保証される。つまり、Copilot+ PCは**“AIネイティブなWindows端末”の最低条件**を定めたものである。
Copilot+ PCに対応することで、Windows上で新しいAI体験が解禁される。代表的な機能が「Recall」「Cocreator」「Live Captions」「Windows Studio Effects」などである。Recallは、PC上の全操作履歴をAIが記録し、ユーザーが自然言語で「昨日見た青いグラフの資料」と検索するだけで瞬時に再現できる。Cocreatorは、スケッチや文字入力からリアルタイムで画像を生成し、Live Captionsは40言語以上の音声を英語に即時翻訳する。これらは全て、NPUがローカルで推論処理を行うことで、クラウド通信なしに低遅延で動作することが特徴である。
| 機能名 | 概要 | 処理実行場所 | 
|---|---|---|
| Recall | 過去の操作履歴をAI検索 | ローカルNPU | 
| Cocreator | テキストやスケッチから画像生成 | ローカルNPU | 
| Live Captions | 音声のリアルタイム翻訳 | ローカルNPU | 
| Windows Studio Effects | カメラ映像の自動補正 | ローカルNPU | 
Copilot+ PCはまた、Microsoftが提唱する「AIセキュリティエコシステム」とも連動している。全モデルにPlutonセキュリティプロセッサーの有効化を義務付け、ハードウェアからクラウドまで一貫した防御体制を構築。さらに、WindowsのアップデートやIntuneなどの管理基盤を通じて、企業レベルでのセキュリティ運用が可能となっている。
Copilot+ PCは、今後の企業デバイス調達における「最低基準」として定着する可能性が高い。Windows 10サポート終了(2025年10月)を契機に、企業のPCリプレースは必然的にCopilot+世代へ移行する。IT管理者にとってそれは、単なる機種変更ではなく、AI時代の業務基盤を再構築する戦略的判断となるだろう。
日本企業のAI PC導入を加速させる3つの要因

AI PC市場の拡大はグローバル現象だが、特に日本ではその導入が急速に進みつつある。背景には、デジタルインフラの転換点・政策支援・人材構造の変化という三重の要因がある。
第一の要因は、Windows 10サポート終了によるリプレース需要である。2025年10月のサポート終了を目前に控え、企業はセキュリティリスクを回避するため大規模なPC更新を余儀なくされている。IDC Japanによれば、国内法人PCの約40%が更新対象に該当し、そのうちの25%がAI PCへ移行すると予測されている。これにより、AI PCが「選択肢」ではなく「次期標準」として採用される流れが加速している。
第二の要因は、政府主導のAI人材・DX推進政策である。経済産業省が掲げる「AI戦略2025」では、生成AIを活用した業務効率化・創造性向上を国家レベルで支援しており、企業のIT投資にも補助金や税制優遇が設けられている。特に中小企業向けには、AI PC導入を通じた業務自動化・省力化支援プログラムが進行中であり、地方自治体レベルでも補助制度が拡大している。
第三の要因は、働き方の多様化とAIリテラシーの高まりである。リモートワークや副業制度が定着する中で、社員一人ひとりがAIツールを活用して生産性を高める環境が求められている。AI PCは、Copilot機能や自動要約・翻訳などをローカルで処理できるため、ネットワーク制約のある環境でも安定したAI支援が可能である。これは、クラウド依存を減らしつつ、個人単位でのAI活用を加速させる装置として大きな意味を持つ。
| 導入促進要因 | 内容 | 主な影響 | 
|---|---|---|
| OSサポート終了 | Windows 10の終焉による買い替え需要 | 法人の更新サイクルを前倒し | 
| 政策支援 | DX補助金・AI戦略2025 | 中小企業の導入を後押し | 
| 働き方変革 | ハイブリッドワーク・AIリテラシー向上 | 個人レベルでのAI活用拡大 | 
これら3つの波が同時に押し寄せることで、日本市場では2026年にAI PCのシェアが全体の43%に達すると予測されている。NPUを搭載したAI PCは、単なる端末更新を超えた「AI活用インフラの整備」として位置付けられつつある。
NEC・富士通・Dynabookの国内戦略比較:AI PC時代の再定義
日本の主要PCメーカーもまた、AI PCシフトを契機にビジネスモデルの再構築を進めている。NEC・富士通・Dynabookの3社は、それぞれ異なる方向からAI×エンタープライズ戦略を描いている。
NECパーソナルコンピュータは、法人市場でのシェア拡大を最優先課題として掲げ、営業体制の再編を進めている。2024年には法人向けAI PC「VersaProタイプVZ」を発表し、Copilot+準拠のNPU搭載モデルを中心にラインアップを刷新。vPro対応やPlutonセキュリティ搭載など、IT部門の管理性・安全性を重視した設計が特徴である。NECは「ハードウェア提供」から「運用支援・ライフサイクル提案」へと軸足を移し、官公庁・教育機関・大企業向けに“安全なAI導入基盤”を提供する方向へ進化している。
富士通は、「Uvance」を中核としたソリューションビジネスに舵を切った。AI PCは単なる端末ではなく、同社のAIコンサルティングブランド「Uvance Wayfinders」による業務変革支援の入り口として位置付けられている。スーパーコンピュータ「富岳」で培ったAI技術を民間企業向けに展開し、NVIDIAとの協業でAI半導体開発にも着手。ハードウェアとサービスの両輪で顧客のDXを支える体制を整備している。
Dynabookは、中堅・中小企業層に焦点を当てた「現場密着型AIソリューション」を展開している。Copilot+対応AI PCに加え、XRグラス「dynaEdge XR1」やオンプレミス生成AIサーバー構築支援などを提供。特にLCM(ライフサイクルマネジメント)サービスによって、PC導入から廃棄までを一括支援し、AI導入の負担を軽減するワンストップ体制を確立している。
| 企業 | 戦略軸 | 特徴 | 主な顧客層 | 
|---|---|---|---|
| NEC | セキュリティ・運用支援 | Pluton搭載・官公庁向け | 官公庁・大企業 | 
| 富士通 | コンサル+ハード連携 | AIソリューション統合 | 大手・金融・製造業 | 
| Dynabook | 中小企業支援 | LCM・XR・生成AI連携 | 中堅・中小企業 | 
3社に共通するのは、AI PCを「製品」ではなく「サービスの入り口」として再定義している点である。NPU搭載デバイスを中心に、AIの民主化を企業現場に広げる役割を果たすことが、日本メーカーの新たな競争力の源泉となりつつある。
IT管理者の新たな使命:セキュアコアとPlutonで守るAIデバイス

AI PCの導入は利便性と生産性を高める一方で、セキュリティリスクの増大をもたらす。AIモデルや生成データがローカル環境で動作することにより、企業の機密情報がデバイス内部に保存される頻度が飛躍的に増加するためである。ここで鍵となるのが、Microsoftが推進する「Secured-core PC」および「Plutonセキュリティプロセッサー」という2つの防御基盤である。
Secured-core PCとは、ファームウェアレベルからOSまでをハードウェアで防御する概念であり、BIOS攻撃やファームウェア改ざんを防ぐためにTrusted Platform Module(TPM)や仮想化ベースのセキュリティ(VBS)を組み合わせる。従来のアンチウイルス対策が「検知と除去」に依存していたのに対し、Secured-coreは「侵入前に遮断する」構造を採る。これにより、攻撃経路を根本的に減らすことができる。
一方、Plutonセキュリティプロセッサーは、MicrosoftとAMD・Intel・Qualcommが共同開発したチップ内蔵型のTPM後継技術である。従来のTPMがマザーボード上の別チップとして実装されていたのに対し、PlutonはCPUやNPUに統合されており、物理的なバス経由の攻撃を完全に排除できる。これにより、暗号鍵や認証データを外部から抽出することが不可能となり、ランサムウェアやファームウェアマルウェアに対しても高い耐性を発揮する。
| セキュリティ技術 | 主な防御対象 | 特徴 | 
|---|---|---|
| Secured-core PC | ファームウェア・OS攻撃 | ハードウェアとOSの統合防御 | 
| Plutonプロセッサー | 暗号鍵・TPM攻撃 | CPU統合による物理攻撃遮断 | 
| VBS(仮想化ベースセキュリティ) | メモリ攻撃 | 仮想領域隔離による防御 | 
AI PC時代においては、従業員が生成AIをローカルで扱うケースが増え、AIモデルそのものが「企業資産」として保護対象になる。そのため、IT管理者の役割は、端末の管理者から「AIセキュリティアーキテクト」へと拡張されつつある。NPUによるAI処理を保護するには、Plutonを有効化し、Windows Defender for EndpointなどのEDR(脅威検出システム)と連携させることが推奨される。
セキュリティの焦点がクラウドから端末へ移る中で、ハードウェアレベルの防御がIT戦略の中心に据えられる時代が到来している。AI PC導入は、単なるハード更新ではなく、「AIを安全に活用する組織構造の再設計」に他ならない。
AI PCが再構築するTCOモデルとROI評価の新基準
AI PC導入にあたって、IT管理者が最も注視すべき指標は「TCO(総保有コスト)」と「ROI(投資対効果)」である。従来のPC更新では、ハードウェア価格と保守コストを中心に評価していたが、AI PC時代には「生成AI活用による生産性向上効果」が新たな価値指標として加わる。
IDC Japanの調査によると、Copilot+ PCを導入した企業では、文書作成・データ整理・会議記録要約などにかかる時間が平均28%削減され、年間で従業員1人あたり約120時間の業務効率化が実現したと報告されている。この時間価値を人件費換算すれば、AI PC導入コストをわずか1年で回収できる計算になる。
TCO評価における主要項目は次の3点である。
- デバイスコスト:AI PCは従来機より1〜2割高価だが、電力効率の向上により稼働コストは低下
- 運用コスト:NPU活用によるローカルAI処理でクラウド課金を削減
- サポートコスト:Copilotによる自動トラブルシューティングでITサポート負荷を軽減
これらを考慮すると、AI PCの実質的なTCOは従来型と比較して5〜10%低下する可能性がある。さらに、生成AI機能がもたらす時間価値をROIに組み込むことで、「費用削減」から「価値創出」へと評価軸が転換する。
| 評価軸 | 従来PC | AI PC | 
|---|---|---|
| コスト中心 | ハード・保守費用重視 | AIによる業務効率効果を加味 | 
| 評価期間 | 3〜5年スパン | 2年以内の投資回収を想定 | 
| 主なROI要素 | TCO削減 | 生産性+AI自動化+セキュリティ強化 | 
AI PCの普及は、企業財務にも影響を与える。これまで「コストセンター」とされてきた情報システム部門が、AI活用によって事業価値を創出する「プロフィットセンター」へと変わる可能性があるからだ。
AI PC導入のROIを最大化するためには、単なる機器更新ではなく、「AIワークフロー再設計」と「人材の再教育」を並行して行う必要がある。AIを使いこなす人材が増えるほど、投資対効果は指数関数的に高まる。IT管理者は今後、コスト管理者ではなく、AI経営を支える戦略投資の設計者としての役割を担うことになるだろう。
